アントワープを何度か訪れるうち、この都市には、ベルギーの他の都市には無い大きな特色があるのに気がつきました。それは、「フランダースの犬」の大聖堂に代表される古い伝統的な世界と、最先端のファッションやショップが並ぶ、ヨーロッパの流行発信地としての世界が上手く混在していること。

古い建物を利用したナイキの店舗は、アントワープの伝統と先進性を象徴するショップの一つ。
アントワープ駅やグロートマルクトの美しさは、中世そのままの世界に入り込んだ気分になれますが、そこから少し通りを歩くだけで、格好良くておしゃれな人たち(多分アントワープ王立学院の関係者?)で溢れる、素敵なカフェがあちこちに出現します。
アントワープでは、これまで母娘で行ったカフェがたくさんあるのですが、当たり外れがあったため、自分たちが行った中で本当に良かったカフェをご紹介します。
ベルギーの歴史を感じるならここ!超有名カフェ 「ヘット エルフデ ヘボド(’t Elfde Gebod)」

アントワープで一番有名なカフェ。必ず行く価値ありの楽しい場所です。
フランダースの犬の最後の場面で有名な、アントワープのノートルダム大聖堂(聖母大聖堂)の真横にある、世界的に有名な”カトリック”カフェ。中に入るとまず驚くのが、店内中に飾られたキリスト教にまつわる彫像の数々。壁、天井、あらゆるところが埋め尽くされていて圧巻の一言。
このカフェの建物が完成したのは400年以上前で、当初はノートルダム大聖堂で働く人々の仕事場として使われていたそうです。その後はカフェとして使われることになり、カトリック彫像のコレクターであった初代オーナーが自らのコレクションをカフェの店内に飾ったのが始まり。
大聖堂の隣という立地もあり、世界中のカトリックの人たちが観光で訪れるカフェでありながら、ローカルの憩いの場として長年足繁く通う人も多いそう。フランダースの犬の名場面を思い出しながら、ベルギーの歴史に浸れます。

彫像以外にも、キリスト教にまつわる祭壇画、雑貨もたくさん©Anne Helmond
コレクターの初代オーナーは、もう一つ面白い逸話を残しています。それは、店名であるヘット エルフデ ヘボド(Het Elfde Gebod)とは、直訳すると「11個めの戒律(the 11th commandment)」。本当はカトリックの戒律は10個しかないのですが、オーナーは冗談で11個目を勝手に作っちゃったのです。そしてその内容とは、「ビールを飲む」こと。というわけで、このお店に来たからには、このお店のオリジナルビールを皮切りにいろいろなビールを飲んで、11個目の戒律を心ゆくまで楽しみます。

ツタに覆われた外観と、コーナーにあるマリア様の像が目印。夜はビアパブとしてビールも食事も食べられます。アントワープの夜を楽しむのにもおすすめ
‘t Elfde gebod
オルタの建築美に浸る 「グランカフェ オルタ(Grand Café Horta)」

日本の建築にも多大な影響を与えたアールヌーヴォーに興味がある方におすすめ
ベルギー生まれのアールヌーヴォーの有名建築家、ヴィクトール・オルタの建築物をカフェに改装した「グランカフェ・オルタ」。オルタの建築物といえば、ブリュッセルの邸宅群やベルギー漫画センターが有名ですが、ここはオルタの建築のなかでゆっくりとカフェを楽しめる、アントワープの見逃せないランドマークです。

コーヒーやお茶よりもベルギービールが充実のドリンクメニュー。実はビールのメニューはまだまだ続きます。
カフェという名前ながら、朝9時から夜22時までオープンしており、しっかりした朝食やランチ、ディナーも楽しめます。パーティーや結婚式などの貸切でも使われる料理は、本格的なベルギー料理から野菜たっぷりのサラダまで様々。ビールのメニューも充実しています。
もっと詳しい体験記はこちら
Horta Grand Café & Art Nouveau Zaal
ウェブサイト:公式サイト
アントワープ駅構内とは思えない「ロイヤルカフェ アントワープ(Le Royal Café Antwerp)」

アントワープ駅前にあるロイヤルカフェ。これが駅のカフェなんて信じられない?!© Le Royal Café
「世界の最も美しい駅」の常連であるアントワープ駅構内にある、昔は一等車の待合室だった場所を改装して作られたカフェがこちら。アントワープ駅でちょっと時間ができた方は、是非とも訪れてほしい場所です。
見上げるほど高い天井と、優雅な内装が見どころです。飲み物だけでなく軽食も充実しています。広いので席数も多く、値段も良心的なので、駅での待ち合わせにも最適。

世界一美しい駅で気軽にカフェが楽しめる場所。待ち合わせや電車の待ち時間にも使えます
詳しい体験記はこちら
ヨーロッパで良いカフェを見分けるポイント
ところでみなさんは、ヨーロッパ旅行で「外れ」のカフェに入ったことはありませんか?私たち母娘は、旅行初心者の頃によくありました。しかもなぜか、そのうち数回はブリュッセルとアントワープに集中していました。

グラン・カフェでコーヒーと一緒にサーブされた、アントワープ名物「手」のクッキー。ドリンクにはチョコやクッキーが付くのがベルギー流です
この2都市だけではなく、ヨーロッパの古い街全体に言えることですが、立地が良く、古い建物を利用したカフェは見た目がとても素敵なため、一見して本当にいいカフェかどうかを判断するのがとても難しいです。旅行サイトで観光客に人気のカフェも参考にはなりますが、そういうカフェは”ツーリストトラップ(観光客しかいない)”カフェであることも多いというのが、私たちが実際に体験した印象。
ヨーロッパ旅行を何度も経験して、私たち母娘が「いいカフェ選び」のポイントにしているのは、とにかくお店の前に呼び込みの人が立っているカフェには行かないこと。呼び込みの人は、いかにも観光客っぽい私たちに話しかけ、考える隙を与えず、にこやかな笑顔と会話で店内に招待します。そんな彼らの態度は、知らない海外で迷っている時は、素晴らしい啓示のように思えるもの。ですが、本当に素敵なカフェなら、そんなことをする必要はないはずですし、呼び込みしているカフェで良かったところは今まで全くありません。
地元っ子は、自分が知っているカフェや、家族に友達に勧められたカフェ、人気のカフェなどを選んで行けますが、観光で1日だけその街を訪れる私たちのような旅行者にとっては、まず「呼び込みカフェに行かない」が最初のステップになります。