ヨーロッパ旅行で安易に高速バスの利用を勧めるのはやめてほしい

[治安と安全]ヨーロッパで長距離バスを利用するべきでない理由

BELPLUS編集部
国外へ移動

(上の写真は、わたしがベルギーのブリュッセルからオランダのアムステルダムまでの区間を、格安長距離バス「Euroline(ユーロライン)」で移動した時に車内から撮った写真です。この写真の後に起こったトラブルについても書いています。)

日本と同様、ヨーロッパの各国でも「長距離バス」が複数の会社によって運営されています。ヨーロッパの場合は他の国と陸続きの国が多いため、都市間を移動するインターシティバスのほか、他の国へと移動するバスの国際便も多く運行しているのが特徴です。特に、国土が狭く、他の国へと行きやすいブリュッセルやアムステルダムは、隣国行きの国際バスがメジャーな移動手段として利用されています。

このような高速バス会社で有名なのが、まずは老舗の「Euroline」をはじめ、イギリス資本ながらも米国でもメジャーとなった「Megabus(メガバス)」、そしてフランス資本の「OUIBUS」に「Flixbus」などがあります。これらのバスサービスは、ヨーロッパの各主要都市に停留所があり、直前でもネット予約が可能。そして何より、料金の安さで知られています。

ですが、在住者が多いBELPLUS編集部では、このようなヨーロッパの高速バスを全くおすすめしていません。バスを使いこなして格安で旅をする日本人も多くいらっしゃることも知っていますが、実際に自分が乗車してみた結果、決して他人には気軽に「乗ってみて」と言えるものではないと分かったからです。

ここでは、ヨーロッパの国の移動に格安バスを使ってみたいんだけど、本当に大丈夫かな?と思っている方のために、実際に乗車して気づいたことをまとめてみました。

ユーロラインのオフィス。この前に複数のバスが並んでおり、自分の予約したバスを探して乗ります。

ユーロラインのオフィス。この前に複数のバスが並んでおり、自分の予約したバスを探して乗ります。

車内が汚い

最初にお伝えしたいのが、ヨーロッパでの高速バスの位置付けは「車や電車に乗るお金がない人が乗る乗り物」です。

日本では、高級路線の高速バスがあったり、深夜発・早朝着の効率の良さからあえてバスを選ぶ利用者もいます。また、格安バスと言っても掃除が行き届いていたり、男性/女性と席を分ける配慮もあるなどして、最低限気持ちよく過ごせる配慮がなされています。

ですがヨーロッパの格安バスは、値段相応のサービスしか得られません。というよりも、サービスという概念が無いという方が正しいです。

座席にお菓子の屑はこぼれているし、空き缶やペットボトルは足元を転がっている、そして座席に足を乗せる人の靴についた泥がシートに付いている、足元のゴミ箱が溢れかえっている、ということが一般的にあります。

また、当然そのような汚い車内では、利用する人のマナーも自然と悪くなりがちです。靴を脱いだ足を前の人の肘掛の上に乗せる、というのもあちこちで見ました(座席が狭いのも原因の一つですが)

「できるだけ安く目的地へ」がテーマなので、車内が清潔で、ゴミひとつなく、背もたれのヘッドシートは真っ白で…という日本の高速バスと同じレベルを期待するとかなり辛いです。

時間通りに運行しない

これは鉄道にも同じことが言えますが、長距離バスの場合は、渋滞の影響も受けるのでさらに酷くなります。出発時間も5分〜10分程度の遅れは遅れに入らないほど当たり前ですし、到着時間はあくまでも「目安」。ブリュッセルで、よくこのようなバスが渋滞にはまって微動だにしないのをよく見かけます。

ある程度の渋滞はスケジュールに入っているかもしれませんが、到着先で決まった時間に予定がある場合は、できるだけ鉄道や飛行機(中距離以上の場合)を使った方がいいです。

車内の治安

上にも書きましたが、高速バスを利用するのは基本的に「車や電車に乗るお金がない人」が中心です。そこに、最新のスマホとスーツケース、小綺麗な服を身につけた日本人観光客が乗ってくるということは、必要以上に周囲の興味を引くものです。

特に夜行バスや、深夜着となる高速バスでは、車中だけでなく降車後にも貴重品を狙われる可能性があります。

故障した場合、振替輸送は無いと思うべき

メガバスとEuroline、どちらも一回ずつ「発車後、車体トラブルにより緊急停止、便がキャンセル」にあったことがあります。メガバスの時は発車した直後だったため、乗客は全員その場で30分ほど待機し、後から来た振替バスに乗って目的地まで行くことができました。

最悪だったのはEurolineです。何と、ブリュッセル〜アムステルダム間のハイウェイの途中で緊急停止となり(今考えるととても怖い。よく事故に合わなかったものです)。運転手が車体を点検したけれども治らず、また、振替バスのめども立たないことから、結局その場で「全員解散」となったのです。

日本人である私は、ハイウェイの脇で「全員解散」の意味がわからずにポカーンとしていましたが、周囲の人は半ば諦めたように、さっさとどこかに連絡を取り始めました。やがて、家族の車やタクシー(共同で頼んだ人たちがいた)が次々と現場に到着し、それで自力で最寄りの都市部まで行くしかなかったのです。

私は本当にラッキーなことに、他の乗客のために来た親戚の車に同乗させてもらい、近くの駅まで送ってもらいましたが、これが無かったら、一体どうしてたんだろうと思うと本当に恐ろしいです。

また、このようなトラブル時には返金されるということでしたが、金額自体が大したことが無い割には、返金手続きがあまりにも面倒であることから、そのままやめてしまいました。まさに、安かろう悪かろうの見本のような経験です。

バス停周辺の治安

ベルギーでは、格安バスの多くはブリュッセル北駅に停車します。北駅は本当に不思議なところで、欧州連合やNATOなどの国際組織が密集するエリアへの最寄り駅である一方、国内では南駅と同様治安が悪い駅としても有名です。

駅のメイン部分には普通に人が行き交い、カフェやキオスクもあるのですが、メイン以外の通路を歩くと、通路の両脇に人が固まってじっと見られているのを感じます。

そしてこのブリュッセル北駅で最も治安が悪く、多くの人が強盗や軽犯罪に合っているのがバス乗り場です(このために、バス乗り場自体を移転したほうがいいのではという案も出ているほどです)。深夜発着の乗客や、ブリュッセルに不慣れな外国人がよくターゲットにされます。

トラブルにあったときに補償が無い

上記の「振替輸送が無い」とも関連していますが、万が一乗車中に事故に合ったときに、格安バスで補償されるのはほんのわずかです。これは格安バスが安い理由の一つであり、バス会社が悪いのではなく、乗客が安さと引き換えに何かあっても補償は要りませんという契約に同意しているとも言えます。

過去に、日本の高速バスでも、長時間労働を強いられた運転手による居眠り事故があり、高速バス会社による補償をめぐる問題に発展しました。このようなことは、ヨーロッパでも決して起こらないとは言い切れません(格安バス・トラック運転手の長時間労働はヨーロッパでも問題視されています)。

また、鉄道では厳重に行われている乗客の荷物チェックも格安バスではほとんどありません。

最後に:長距離移動には鉄道を。事前に予約すれば安いチケットもあります

特に海外旅行に慣れていない方や、清潔さが気になる方、そして安全で楽しい旅をしたい方には、迷わず鉄道での移動をおすすめします。

鉄道も完璧な手段ではありません。遅延もよくありますし、たまにはキャンセルもあります。ですがそれでも、格安バスとは比較にならないほど清潔で、車内チェックも行き届いています。周りにビジネスマンや家族連れも多く、スーツケースを持っていても安心して乗ることができます。

一等車の席の様子。座席が広く、静かにくつろげます。

ブリュッセル〜パリ間で利用した高速鉄道タリスの車内。乗車前には荷物のチェックがあります。

格安バスに比べると、鉄道はチケットの価格が高すぎるという声もたまに聞きます。ですがそれは、チケットを直前予約した場合です。ヨーロッパの高速鉄道は飛行機と料金の仕組みが似ており、早く購入するほど格安料金で乗車できる可能性が高いです。チケットは日本語で予約できるため、旅行の日程が決まったら、なるべく早いうちに鉄道のチケットも購入しておくと安心です(一般的に、乗車日の2~3ヶ月前から予約できます)。

BELPLUSでは、フランス〜ベルギー〜オランダの移動に使う高速鉄道と、チケットの予約方法を説明しています。

日本と同じ感覚で、綺麗で行き届いた長距離バスならいいかな、とは決して思わないでください。治安と安全をお金で買うという意識が、ヨーロッパでは特に大事だと思います。

WRITER

BELPLUS編集部

BELPLUS(ベルプラス)は、ベルギー在住者が共同で運営するメディアです。旅行に役立つ情報のほか、現地長期滞在、留学生のための生活情報もお届けしています。