ヨーロッパ旅行にかかる費用

テロで旅行をキャンセルするとき、キャンセル料は払わなくていい?各旅行会社の場合

BELPLUS編集部
ヨーロッパ旅行のFAQ

海外旅行の前に、目的地の国でテロが発生。様々な事情から、申し込みをしたパックツアーをキャンセルしたいという方も多いと思います。その場合、支払ったツアー代金は全額戻ってくるのか、それともキャンセル料が発生するのかは気になるところです。テロ発生時のキャンセル料を大手旅行代理店(HIS)、近畿日本ツーリスト、JTB、阪急交通社などを中心に調べました。

原則として、キャンセル料金を払わなくてはいけない

キャンセル料金に関しては、「国土交通省 標準旅行業約款」の中の「旅行者の解除権」の条で、どういう場合にキャンセル料を払わずにツアー契約を解除できるかが決められています。

国土交通省 標準旅行業約款(旅行者の解除権)より引用:
旅行者は、次に掲げる場合において、前項の規定にかかわらず、旅行開始前に取消料を支払うことなく募集型企画旅行契約を解除することができます。
三 天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。

そのため、「暴動」に相当するテロの場合=キャンセル料は発生しないと単純に考えられそうなのですが、一つ落とし穴があります。
この「旅行が安全かつ円滑に実施されそうかどうか」は、ツアー参加者が独自で判断するものではなく、旅行会社が様々な情報を収集・検討した上で、総合的に判断するものだからです。

判断基準の重要な情報源になっているのが、外務省が発表している「海外安全情報」。世界中の国を、危険度に応じて4つのレベルに分かれています。このレベルによって、旅行会社のキャンセル対応が変わってくるようです。

レベル1 十分注意してください=旅行の安全かつ円滑な実施は不可能ではない
レベル2 不要不急の渡航は止めてください=ケースバイケース
レベル3 渡航はやめてください(渡航中止勧告)=旅行の安全かつ円滑な実施は不可能
レベル4 退避してください(退避勧告)=旅行の安全かつ円滑な実施は不可能

つまり、レベル1だとキャンセル料はかかる、2だと旅行会社の判断による、3または4だとキャンセル料は不要ということになります。

2の場合は他にも、他の旅行会社のツアーのキャンセル状況や、現地の交通機関の影響、目的地のショップやレストランの営業状態なども最終的な判断の要素になります。

過去のテロ事件とキャンセル料金の発生事例

過去のテロ事件で、旅行会社のキャンセル料は発生したかどうかを、ヨーロッパの例を中心に調べました。

  • フランス パリの同時多発テロ(2015年11月13日発生)では、発生直後は全てのツアーが中止になり、キャンセル料も全額免除になりました。一方、近畿日本ツーリストやJTBは二週間後の11月26日出発分のツアー分から、休業していた観光施設などが再開されたという情報より、これ以降はキャンセル料の全額免除を行わないと判断しました。
  • スペイン バルセロナのテロ(2017年8月発生)では、発生直後でもサグラダ・ファミリアなどの観光名所は通常通りオープンしていたため、キャンセル料の全額免除はほとんど無かったそうです。
  • ベルギー ブリュッセルの空港テロ(2016年3月発生)では、空港がテロの被害を受け、航空便が全て運休となりました。このためツアーの催行が不可能となり、近畿日本ツーリストやJTBなどの各旅行会社はツアー代金の全額を返金しました。その一方でHISは、空港が復旧し運行便が再開した後は、通常のキャンセル料を収受すると表明しました。

上記の3つの事例からもわかるように、キャンセル料が全額免除になるかどうかは、個人の判断やテロの危険性ではなく、ツアーが問題なく催行できるかどうかによって判断されているようです。

大手旅行代理店の旅行業約款

次に、大手旅行会社が個別に設定している旅行業約款について調べてみました。

JTBの場合

第4章 契約の解除 (旅行者の解除権)
第16条 2 旅行者は、次に掲げる場合において、前項の規定にかかわらず、旅行開始前に取消料を支払うことなく募集型企画旅行契約を解除することができます。
(3)天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。

JTB 旅行業約款(募集型企画旅行契約の部)より引用

近畿日本ツーリストの場合

第4章 契約の解除(旅行者の解除権)
第16条 2 旅行者は、次に掲げる場合において、前項の規定にかかわらず、旅行開始前に取消料を支払うことなく募集型企画旅行契約を解除することができます。
(3) 天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。

近畿日本ツーリスト 旅行業約款(募集型企画旅行契約の部)より引用

2社とも、国土交通省の標準旅行業約款と全く同じです。他にも、HISやJALパックツアーの場合も調べてみましたが、いずれも標準旅行業約款と同じという結果でした。

つまり、どの旅行会社のパックツアーを選んでいても、キャンセル料については国土交通省の決定した統一のルールに従い各旅行会社が判断する、ということになっています。

最後に

海外旅行のパックツアー代金は高額なため、キャンセル料は払いたくないのはもちろんのことです。また、キャンセル料が払われるか払われないか微妙なケースでは、参加者側は危険だと判断しているのに、旅行会社のルールで「実施に問題ありません」と判断されたり、またはその逆のケースもあるというのは腑に落ちないところでもあります。

せっかく有名な観光地や楽しい景色を見に海外に行くのに、そもそもテロがあった直後に同じように楽しめるか、と言われると不安で無理ですよね…。

ですが、旅行はそもそも命があるから楽しめるもの。キャンセル料が発生した場合でも、「このまま現地に行っていたら、危険な状況だったかもしれない。命が助かってよかった」という気持ちでいると、スッパリと諦めがつきそうです。

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BELPLUS編集部

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