ベルギーのカフェやレストランでは、文化の違いから、日本では普通に行われていることが通用しなかったり、かえって失礼にあたる場合もあります。このページでは、一般的なカフェやビアバー、ブラッセリーなどのカジュアルなレストランでのマナーをまとめました。
注文はテーブルで

外のテラス席に座っても、注文から支払いまでは全てテーブルで。
テーブル注文のカフェでは、テーブルには既にメニューが置いてあることが多いです。店員さんに声をかけたり案内してもらう必要はなく、空いている席があれば自由に座ります。そこでメニューを見ていると、そのテーブル担当の店員さんが気付いて来てくれるので、注文します(メニューがない場合はまずメニューを持ってきてくれます)。入店時も注文時も、お店の入り口やレジ付近まで足を運ぶ必要はありません。
特に忙しい時間帯の場合、店員さんが来てくれるまでに時間がかかることがあります。この辺りは目が合うか合わないかのタイミングにもよりますが、待っていれば必ず来てくれますので、気長に待つのがベルギー流です。ただし、メニューを広げているとまだ注文するものを決めていないと思われることがあるので、メニューは閉じてテーブルの上に置いておきましょう。

多くのカフェでは店内には行かず、先にテラス席に座ります。注文も支払いもテーブルで済ませるので、店内には一度も行かない場合も。
あまりにも混んでいるカフェの場合、店員さんもどのテーブルで注文がまだなのか忘れていることがあるので、近くまで来たら目で合図したり、軽く手をあげて自分が注文したいことを伝えるといいでしょう。大声で呼びつけたり、他のテーブル担当の店員さんに代わりに注文するのは失礼にあたります。
水は無料ではなく注文するもの

ミネラルウォーターは瓶で、氷の入ったグラスと一緒にサーブされます。
ベルギーにはたくさんのミネラルウォーターのブランドがありますが、日本人の口に合うと思うのは「Bru」「Spa」「Chaudfontaine」です。ペリエやエビアンなどの日本でもよく知られているブランドもあります。これらのミネラルウォーターを注文するときは、名前の隣に書かれているサイズ表記に気をつけてください。一般的には、一人分250mlと小さめの瓶でサーブされます。沢山水分をとりたい時や、数人でシェアしたい時は500mlや1リットルのサイズを頼むと安心です。
面白いことに、ミネラルウォーターよりもベルギービールの方が安いことがよくあります。そのため特に暑い夏は、飲むつもりはなくても水代わりについついビールを注文してしまうことも…!
違う担当者に頼むのはNG
ベルギーは「テーブル担当制」です。あなたのテーブルに来てくれる店員さんは、あなたのテーブルの専門担当者になります。他の店員さんは違うテーブルを担当しています。そのため、他の店員さんがたまたま近くを通ったからといって注文や頼みごとをしても、自分の担当範囲ではないと全く聞いてもらえません。これはお店の人が失礼なのではなく、文化の違いなので、最初から違う店員さんに頼まないようにしましょう。
ちなみに、ヨーロッパの中央に位置し、公用語が3つもある多言語国家のベルギーでは、カフェで働く人たちも語学が堪能。英語は公用語ではありませんが、どのようなカフェでも通じます。ブリュッセルやブルージュなどの都会のカフェでは勿論ですが、いなか町のカフェに行っても英語が通じることには驚くばかりです。
お客さんがどの言語を話すかわからないため、まずはどんなお店に入っても初対面ではフランス語か英語で挨拶されます。言われた挨拶をそのまま返すのが一般的です。その後、「French? English?」と「この後はどの言語で行きますか」という確認があるため、そこで自分の話す言語を伝えます。日本人が多く訪れるお店だと、日本人専用スタッフが来てくれる場合もあります。

一つの料理名の下に、他の言語での料理名がずらりと並ぶのがベルギー流。
メニューは最初から多言語表記のところが多く、一つのメニューに対し、フランス語、オランダ語、ドイツ語、そして英語でそれぞれの名前が書かれています。文字ばかりのメニューに最初はびっくりしますが、読むところはそれほど多くありません。言語別にメニューがある場合は、店員さんが持って来てくれます。
お会計もテーブルで
お会計時には、まず自分の担当の店員さんに「ラディション シルブプレ(フランス語)」または「デレーケニング アストブリフト(オランダ語)」と声をかけ、レシートを持って来てもらいます。言葉をかけるのに自信がなければ、軽く手をあげて合図するという方法もあります。気付いてくれるまでじっと待つのはなかなか面倒な時もありますが、大声で「すみませーん」と呼んだり、自ら席を立って店員さんのところに向かうのは失礼にあたります(ただし、よっぽど急いでいるときは別)。
日本と同じように、レシートの合計金額には税金が含まれています。そのため、レシートの合計金額の通りに支払います。現金で払う場合、紙幣とコインをレシート重ねるようにしてテーブルに置いて待ちます。その後店員さんがお金を回収し、お釣りがある場合は持って来てくれます(店員さんはお釣り用のコインを持っているときもあり、その場合はすぐに払ってくれます)。日本ではこれで完了ですが、ベルギーでは最後に、テーブル担当の店員さんのために少額のコインをチップとして渡すのが一般的です。それをテーブルに置き、席を立ってお店を出ます。
カフェの場合に限りますが、あまり時間がない場合は、注文したものが運ばれて来たタイミングで支払いをすることもできます。最後に支払いのために店員さんを待つ必要がなくなるため、急いでいる場合は、かなりの時間短縮になります。テラス席が広く、店員さんがなかなかつかまりにくそうなカフェなどは、最初からこの方法で支払いを済ませておくと安心です。
チップの払い方
ベルギーには、アメリカのようなチップ文化がありません。基本的には、レシートに書かれている合計金額をそのまま支払います。ただし、とても気持ちいいサービスを受けたり、お皿を追加で持ってきてもらった、席を変えてもらったなど、特別なアレンジや配慮をしてもらい、そのことに感謝の気持ちを表したい場合は、お釣りの一部をチップとして置いていくことは多くの人が行っています。
そのため、厳密には「飲食代金のxx%」という細かい指定はありませんが、合計金額の5~10%の範囲のチップが一般的です。よく誤解されるのですが、チップは強制ではないので、ひどいサービスを受けたと思ったり、料理に満足しなかったときは払う必要はありません。ただしそんな時も「こんな酷いところで働いている店員さんがかわいそうだから」という理由でチップを置いて行く人もいるので、人それぞれだと思います。
最後に、支払い時にチップをまとめて払う方法をご紹介します。例えば、8ユーロの食事をした時。店員さんに10ユーロを渡すと、普通はまず2ユーロのお釣りを持って来てくれるところですが、「お釣りはいりません」と全額チップとして渡したり、「お釣りは1ユーロください」と先にお釣りの金額を指定します。このやり方だと、自動的に1ユーロが店員さんのチップになります。店員さんに「チップを渡しますよ」ということが直接伝えられる、スマートな方法です。
お店での写真撮影は?
ほとんどの場合、カフェやレストランで写真を撮ることは問題ありませんが、撮る時は念のために場の雰囲気を見てください。高級レストランや静かな雰囲気のカフェでは、客にも大人の振る舞いが求められるため、シャッター音を立てるのがためらわれる場合もあります。レストランで記念写真を撮りたいときは、料理がテーブルに届いたタイミングで店員さんに聞いてみましょう。よほど忙しくない場合、快く応じてくれます。
前菜、サラダ・スープ、パスタ、メイン…全部頼まないとダメ?

ベルギーの名物料理、ベルジャンブルー種のビーフステーキとフライドポテト。ステーキの量は日本よりも多く、100g〜200gが普通。
レストランの一般的なメニューは、前菜、サラダ、パスタ、メイン(肉・魚料理)、デザートのセクションに分かれています。各セクションから全て頼むと、いわゆるコース料理と同じ構成になりますが、一品一品の量が多いのでとても全部は食べられません。
コース料理ではなくアラカルトで頼む場合、全部頼む必要はもちろんありませんが、少なくとも2品以上注文するのがマナーです。といっても前菜から2品ではなく、前菜やスープから1品+メインに相当するものを注文します。
メイン料理はその名前から必ず注文しなければいけないと思われがちですが、実際はメインの代わりにサラダやパスタだけを頼んでも問題ありません。ただしその場合、付け合わせのミニサラダではなく、メイン料理と同じ価格帯のボリュームがあるサラダを注文します。また、ビストロなどではメインだけを頼むこともできます。ただし、前菜はあくまでもサイドの料理という位置付けなので、前菜だけを頼むということはありません。

レストランで「シーフードサラダ」を頼んだ結果。カラマリのフリットに、海老のサテー、そしてチキンまで付いてきました。
この辺りは、レストランが出す料理のボリュームや、雰囲気、ランチかディナーか、そして価格帯に大きく左右されます。カジュアルなレストランでは1品だけ頼むということは問題ありませんが、高級レストランのディナーでは、アラカルトの場合は少なくとも2~3品は頼む(コース料理と近い構成にする)ことがマナーとして求められます。注文前に周りのテーブルを見て、一皿のボリュームはどれくらいか、どんな料理を食べているかを確認してみてください。
おすすめのマナー本
私ははじめてのベルギー旅行で、お水が有料であることに気がつかず、「勝手に請求された」と勘違いして恥ずかしい思いをしたことがあります。上に書いたことは、明らかなマナー違反というよりも、このような日本とベルギーの文化の違いから生じるちょっとした違いについて書いたものです。
せっかくなので、ヨーロッパのカフェやレストランではエレガントに振舞いたいもの。私はマナーに自信がないため、毎回海外に行く前に「ティファニーのテーブルマナー」という本を予習がわりに読むようにしています。ティファニーの前会長による一般的な欧米での食事マナーが、かわいいイラスト付きでわかりやすく説明されているので、はじめてヨーロッパでレストランに行く方に特におすすめです。なんとこの本、1969年に十代の女の子向けに発行されたかなり古い本ですが、書かれているテーブルマナーは今でも通用するものばかりです。ページ数も少ないため、手荷物に入れて飛行機や電車の移動中にすぐに読むことができます。
日本のマナーの本は、「日本のマナー+欧米のマナー」が一緒になっているものが多いですが、この本は欧米のマナーにだけ絞った薄い本なので、旅行の携帯にぴったりです。