なかなか知られていないベルギーの歴史
ベルギーは小さい国ですが、その中で3つの公用語を使い、政府も地域ごとに分かれている複雑な状態が続いています。ですが、残念ながら、日本の学校教育ではベルギーが取り上げられる機会はあまりなく、「なぜ」そのような国の状態が続いているのかについてはあまり知られていないのが現状です。
言語で北と南に分断されたこの国は、現在、国が二つに分かれるかもしれないという分断の危機を迎えているのですが、どのような緊張状態が続いているのか、お互いの地域の人たちは相手の地域に対してどのような感情を持っているのかに対しては、普段のニュースからはなかなか見えてきません。
薄くて読みやすく、わかりやすいベルギー本決定版
そんな複雑なベルギーの歴史を、今まで出版された本で一番すっきりまとめていると思われるのが、新書「物語 ベルギーの歴史」です。
「物語」とタイトルにあるように、ベルギーという国を主人公にした歴史小説のような内容です。ヨーロッパの中央に位置し、交通の要として重要な場所であるとみなされたベルギーは、ドイツ、フランス、スペインなど様々な隣国の統治下におかれることとなり、度々その世界情勢に翻弄されます。それと同時に、各国の文化や地理的優位性を生かした産業発展により、世界でも類を見ない芳醇な芸術が育つ土壌が形成されます。
ベルギーには美術や建築物を見ることを目的で訪れる方も多いと思いますが、「物語 ベルギーの歴史」では、国の歴史にからめながら「このような時代背景からこの建築・芸術が生まれた」ということがわかりやすく頭に入ってきます。グラン・プラスやベギンホフなどベルギーの有名な場所を訪れる前の予習として読んでおきたい情報がいっぱいです。
「物語 ベルギーの歴史」でわかるこんなこと
- 女性のための共同生活施設である「ベギン修道院」はなぜ作られたのか
- がっかり名物と言われる「小便小僧」のモデルは誰か
- ベルギーはなぜ植民地コンゴを獲得する必要があったのか
- なぜ、ベルギーには同じ大学が2つ存在するのか
- 「フランダースの犬」「青い鳥」「タンタンの冒険」などベルギー生まれの物語にある歴史的背景
ビジネスの前にも読みたい本
「物語 ベルギーの歴史」は、言語問題や移民問題など、現代のベルギーの問題を取り上げた本としても大変優れています。日本では馴染みの薄いこの2つの問題は、ベルギーで暮らす人の意識に深く組み込まれているため、ビジネスなどでベルギー出身の人と話す機会がある方も、事前に読んでおくのをおすすめします。