ブルージュの駅から歩いてすぐの場所にあり、周囲には有名ブリュワリーやレストランも多数

世界遺産「ブルージュのベギンホフ」を歩く- 中世に存在した、女性の自立支援のためのコミュニティ

Begijnhof van Brugge / Béguinages flamands
BELPLUS編集部

ベギンホフについて

12~13世紀のベルギーでは、女性が独身のまま生活をするための働き口はほとんど無く、時期がきたら結婚をするか、結婚せずに神に身を捧げるために修道院に入るかの選択肢が一般的でした。さらに、もし結婚することで生活の安定ができたとしても、男性が十字軍の遠征や病気等で亡くなった場合、残された女性には修道院に入る以外の道はほとんどありませんでした。 修道院に入るために修道女になるということは、これまでの生活や築き上げた財産を全て放棄し、完全に俗世の人生をリタイアしなければなりません。 このような中世の封建的社会の中で、当時の女性がどんなことを考えていたのかはは知るすべもありません。ですが多様な生き方を求める現代の女性と同じように、自由を捨てずに生きたい、できれば他人に経済的に頼らず、自分の才能や技術で生活していきたいと思っていた女性もきっといたはずです。 そんな女性の多様な生き方を支えるためにできたのが、ベギン会という女性達の互助組織です。このベギン会は、ベルギーに多くの「ベギンホフ(ベギン会修道院、ベギナージュとも)」と呼ばれる女性の生活拠点を作りました。これらの建物の多くは現在では世界遺産に登録されており、その一つが1245年にフランドル伯夫人によって作られたブルージュのベギンホフです。 [caption id="attachment_3613" align="aligncenter" width="800"]ベギンホフにはたくさんの木々が植えられています。 ベギンホフにはたくさんの木々が植えられています。[/caption] ブルージュの中心部にあり、かつブルージュ駅から近いため、ブルージュで最初にここを訪れる人も多いのではないでしょうか。

レンガ造りの入り口を抜けると、中に見えるのは白い壁の建物と美しい緑の木々たち。春には黄色い花が中庭一面を覆います。

修道院の門にあるサイン。このレンガで囲まれた内部が、ベギン会修道院です

レンガづくりの門にある標識。このレンガで囲まれた一角が、ベギンホフです

修道院の石畳と白いれんがの建物たち

石畳の向こうには、中庭とそれを囲む建物が広がります©Jan D’Hondt

ベギンホフは、女性の自立を支援する場

ベルギーには13のベギンホフが世界遺産として登録されていますが、このブルージュのベギンホフは、ルーヴェンのベギンホフと並んで多くの人々が訪れる場所です。観光客で賑やかな日中のブルージュも、ここだけは静謐に満ちています。

一番おすすめなのは、水仙で埋め尽くされる春から、新色の初夏まで

一番おすすめなのは、水仙で埋め尽くされる春から、新色の初夏まで。

修道院に入る女性というと、財産などを全て投げ打って、生涯神のために質素な暮らしを送る、というイメージがありますが、前述の通り、ベルギーのベギンホフは違いました。ベギンホフは、もともと「女性の自立を促す場」として建設されたものです。そのため、当時はベギンホフに入居する時にも自分の財産を持参することができ、さらにベギンホフ内での経済活動も支援されていました。

「ベギン」と呼ばれる彼女たちが手がけた産業は教育、執筆、看護、織物など多岐にわたり、中には、手広く事業を展開してひと財産を築いたやり手のベギンもいたそう。

ブルージュのベギン会修道院への入り口は数カ所あり、あとは全てレンガの壁に覆われています。

ブルージュのベギンホフへの入り口は数カ所あり、あとは全てレンガの壁に覆われています。ベギンホフの多くは都市部にあり、俗世と完全に切り離されている訳ではありませんが、壁や林などで境界が作られていました。

彼女たちの生活ぶりを知るなら、敷地内にある「ベギンホフの家」博物館へ。小さな博物館ですが、当時の女性の共同生活の様子がそのまま残されています。

「ベギン会修道院の家」博物館への入口です

「ベギンホフの家」博物館への入口

ベギンホフの中に入る

ブルージュの中心にあるマルクト広場からは歩いて15分と少し離れていますが、二つを繋ぐ通りはブルージュらしい小路にかわいいレストランやレースのお店などが並びます。また、周辺はレストランが多く、ランチやカフェをするのにぴったりです。

橋を渡った向こうにある入口の門。

橋を渡った向こうにある入口の門。

入口にはオランダ語、フランス語、英語での看板が。ブルージュはオランダ語圏です。

入口にはオランダ語、フランス語、英語での看板が。ブルージュはオランダ語圏です。

ベギンホフの中にある教会も、礼拝時でなければ入場できます。

修道院らしい質素な雰囲気の教会です。

質素なたたずまいの教会です。

ベギンホフ周辺は、白鳥の大群が住まう場所となっています。白鳥たちはかなり人間に慣れていて、近寄ってもまったく怖がりません。小川には運河クルーズのボートも来るため、白鳥と一緒に泳ぐ姿も見られます。

修道院周辺は白鳥たちの住みかとなっています

ベギンホフ周辺は白鳥たちの住みかとなっています

運河クルーズでボートに乗るのも楽しいです。ベギン修道会はボートの折り返し地点となります。

運河クルーズでボートに乗るのも楽しいです。ベギンホフはボートの折り返し地点となります。

ベギンホフをもっと知るためにおすすめの本

基本情報

名称
ベギンホフ
Begijnhof van Brugge / Béguinages flamands
住所
Begijnhof 30, 8000 Brugge, Belgium
( 地図アプリで場所と行き方を見る)
最寄駅
ブルージュ駅(鉄道)
営業時間
ベギンホフの敷地内は、06:30 - 18:30 敷地内の博物館は 月曜〜土曜:10:00 -17:00 日曜:14:30 - 17:00
料金
ベギンホフ内を歩くだけは無料。館内に入る場合は2ユーロ
トイレ
*2020年時点の情報です。(ご利用上の注意)

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BELPLUS編集部

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